ゼブラフィッシュ研究のリスク

今朝、月曜の朝から頭に来るアクシデントがあった。

先週のどこかでフィッシュテックの二人がファシリティから水を汲むホースを新しいものに取り替えたようだ。フィッシュファシリティは水を循環させていて、魚の交配をセットアップする際もファシリティから水を汲み、個別の交配用の水槽を用意する。僕は昨日、日曜の午後に、その新しいホースを通してファシリティから水を取り、今朝交配させる分の水槽をセットしていた。そして今朝、ラボに来てみると、いくつかの水槽で魚が死んでしまっていた。どうやら、その新しいホース内に溜まっていた水に何か化学薬品(おそらく塩素)が溶け出し、最初の方にセットした水槽の魚が影響を受けてしまったようだ。その中にはいくつかの大事な(しかしその損失に涙するほどではない)魚も含まれていて、月曜の朝からがっくりしてしまった。魚にも申し訳ないことをした。

これは一部に僕の落ち度がある。新しいホースを疑い、水を汲む前に、ある程度の時間水を流しっぱなしにして予防すべきだった。しかし、責任の多くはフィッシュテックにある。ファシリティにつながっているもので何か水を通すものは、事前に必ず、よく洗浄し魚に有害な化学薬品を洗い流しておくべきだ。そして、ラボで働くメンバーは当然そのようになっていると思っている。今回は僕にとっても良い教訓だった。フィッシュテックは頼りにしているが、信用できないこともある。自分の魚は自分で守らねばならない。

当然、このできごとはボスと共有せざるを得なかったのだが、ボスは激怒していた。というのも、今回は少数の交配用の水槽が影響を受けただけだったが、このようなことがファシリティ全体を循環している水に起こってしまうと、途端に貴重な魚が全滅してしまうことも考えられるからだ。それはすなわち、ラボ全員のキャリアを危険にさらすことになる。フィッシュテックの仕事として、ファシリティの管理や修繕があり、彼らは結構な頻度でファシリティの配管類をいじっている。そのパイプに塗るグルーなどに有害な成分があり、それが入り込んでしまうことなどを、ボスはとても警戒している。

僕らの使用しているファシリティは古く、広い部屋にも関わらず全ての水がつながっている。ほとんど一箇所だけで水質のコントロールを行なっている。それだけにリスクが大きい。例えば、計器類が故障して魚を飼育する塩水に一発でも放電してしまえば、それで一巻の終わりだ。考えただけでも寒気がする。最近のゼブラフィッシュ飼育用の棚は棚ごとにフィルターや水の調整装置が付いていて個別の棚の中で水が循環するようになっているはずで、ずっとリスクが小さいだろう。大きな事故が起こらないことを祈りながら、早く卒業してしまいたいと思った。また、最も大事な魚は分けて、少数を別の部屋のファシリティにキープしておく必要があるかもしれない、万が一の為に。研究施設のある場所によっては水質が悪く、魚が卵を産まなくて苦労することがある、と聞いたこともある。水を扱う、というのがゼブラフィッシュ研究の最大のリスクと思われる。


今日は、近くのラボのポスドク候補のセミナーを聞きに行ってきた。そのラボのボスには親切にしてもらっているし、研究内容にも興味があったからだ。とても良いセミナーだった。あれくらいしっかり自分の研究が説明できて、質疑応答もしっかりしていれば、どこかしら希望のラボに入れるのではないだろうか。

 

 

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