MTAは結べず

先週のブログに書いていたアメリカNIHとのMTA契約は結局頓挫してしまった。大学側は遅いなりにも対応してくれて、いざサインを書いたらそれでオーケーというところまで来て、NIH側のルールが2024年頭から変更になり、アメリカ国外の研究者に対してサンプルの提供を取りやめたとのこと。交渉してみたのだが効果はなく、この数週間の努力とこれで研究が進むかもしれないという期待が水の泡になってしまった。落胆している。

仕方がないので、遺伝学を駆使する方向性に急いで切り替えたのだが、同じことを検証しようとしても薬剤なら数日で結果がでることも遺伝学を使うと半年以上かかってしまう。


こちらの大学で卒業研究を面倒見た学生が今回のサイクルで米国の大学院にアプリケーションを書いていたのだが、無事に希望するプログラムから合格が出たとの連絡をくれた。アプリケーションの手伝いもしていたので、安堵すると共に嬉しく思った。研究者にもいろいろなタイプがいると思うが、僕は積極的に学生などの初期キャリアのトレーニーと関わるスタイルの方が僕自身の職業満足度が上がることは明らかだ。

現在、学部を出たてでラボに入ったテクニシャンのトレーニングに関わっているのだが、実際自分の仕事の中にそういった時間がある方が自分の精神を健全に保てるのではないかと思う。相手の研究トレーニングに貢献しているようで、実は僕の方が助けられていて、彼ら彼女らこそが僕をアカデミアに繋ぎとめていてくれてるのではないかというような気持ちがある。

僕は成功者だけが楽しめるような研究環境で仕事をしたいとも思わないし、そういった環境に適応できる人間ではないということを、既にこのポスドクの二年間で理解した。僕は将来(もしくは現在のポスドク期間でも)競争的な環境で生き残ることは難しいのではないかと、そんな気がしている。しかし、僕の貢献できることもあるのではないだろうかと、なんとかそういうものを探したいと思う。僕はベンチに立ってプレーヤーとして研究に参加することは楽しいと思うけれど、エリートサイエンスの世界には性格的にあまり向いていないのではないかと、最近ますますそういった気持ちを強くしている。


趣味のプロジェクトは先週から少し進んで、現在の達成度は4.2%。