1665年ケンブリッジのペスト

『The Great Plague: When Death Came to Cambridge in 1665』(Evelyn Lord著)を読み終えた。この本は、1665-1666年イギリスを襲ったペスト(Plague)の災厄をローカルな視点で分析するという試みで、舞台は学園都市ケンブリッジである。この1665-1666年には万有引力や微積分の発見で有名なアイザック・ニュートンもケンブリッジの学生であり、このペストのパンデミックから逃れるためにケンブリッジを離れ近隣の村に避難していた。

しかし、酷い出来の本なので、この本は読む価値がない。ペストとそのパンデミック下で暮らした人々のことを知りたくて手に取ったものの、あまりに関係ない些末なことが延々とダラダラ脈絡なく書かれていて苦痛で仕方がなかった。ただただ記録をもとに犠牲者を列挙し、そこに17世紀トリビアを混ぜてかさ増ししたような代物である。さらに絶句そして決定的に失望したのは、著者が最後の章でペストがなぜ退いたのかという説をいくつか挙げた際に、ペストを「ウイルス」と書いていたことである。このブログの読者の皆様はご存知の通り、ペストはペスト菌(Yersinia pestis)の感染によって生じる感染症である。時間を無駄にしてしまった気分だ。がっかり。